― フルオートバグキー長期レビュー ―

購入のきっかけ
2023年春のhamlife.jpの記事に、GHDキー社のフルオートバグキーGN209FA発売の記事を見て、左右に並ぶ2本の長いシャフトと光り輝く鏡面仕上げの美しさに心を奪われました。
特に露出した左右対称の長いシャフトになんとも言い表せない魅力を感じ、購入を決意しました。
なお、購入は2023年4月23日(日)に注文しました。
購入から組み立てと設定まで
CQオームさんのネット通販より購入しました。予約注文品とはなっていましたが、注文してから程なくして商品が到着しました。(CQオームさんの商品発送は迅速です)
梱包を開くとクッション材でしっかり保護されたGN209FAの姿が見えます。このGN209FAには、コンデンサー付きリードリレーユニットが別梱包で付属していました。
同梱の「GN209FAフルオートバグキー取扱説明書」を読むと、「短点及び長点の連続符号が出せます(エレキーの様な符号が出せますが可なりの練習と素質が要ります)」と冒頭に記載されています。
この文面を見る限り「素質が要ります」という表現には少々驚きましたが、それだけ扱いの難しいキーであることを、メーカーも率直に伝えようとしていたのだと思います。
このフルオートバグキーGN209FAはGHDキー社の初めてのフルオートバグキーではありません。私が知る限りCQ誌のGHDキー社の広告欄にフルオートバグキーが掲載されていたことを覚えています。当時販売価格が14万円を超えていたことに驚きました。販売時期ははっきり分かりませんが、ずいぶん昔だったように覚えています。
最近ではGN209Wという同じコンセプトのフルオートバグキーが製品としてありましたが、こちらは両シャフトが短くコンパクトな造りとなっています(現在は販売終了)。それに対して長いシャフトを持つGN209FAの姿はとても優雅です。アメリカ製の有名なVibroplex(セミオートマチックキーBug)の質実剛健で効率を求めたバグキーを男性的なイメージとしたら、このGN209FAは優雅で繊細な貴婦人のイメージとでも称しましょうか。
本体はクローム調の鏡面仕上げで、手に取ると金属製キーらしい重厚感があります。
組み立てには、一旦シャフトのストッパーを開き、ウェイト(重り)をシャフトへ通します。ドット用は小さくダッシュ用のウェイトは大きいです。ウェイトの取付が終わったらシャフトのストッパーを元に戻し、シャフトの先端とストッパーのゴムが軽く触れてシャフトが振動しない程度でしっかりネジで固定します。このウェイト取付作業では、シャフトに一番応力の掛かる場面です。慎重に作業する必要があります。
※もしシャフトを曲げてしまうと修理が難しくなる可能性があります。
その他の調整については取扱説明書にメーカーが求める設定基準と要領が細かく記載されているので、その設定基準内で自身の打鍵フィーリングに合うポイントを探りながら調整します。
私が設定したレバーの振れ寸法は、ドット側が1mm、ダッシュ側が2mmです。

はじめての打鍵と感想
接点間隔をきっちり設定し、特に取扱説明書による長点を5つ以上連続送出できるよう慎重に調整しました。私なりの設定を終えリグでモニターしてみました。ドット側のレバーに人差し指、ダッシュ側に親指の配置です。私は左手打ちなのでキーが左配置になります。
調整したばかりのGN209FAでゆっくりと符号を打ちます。ドットは軽くレバーを押すだけで小気味よく連続短点を送出しますが、ダッシュは数字の0、連続長点5つの打鍵を何回も失敗しました。
挙句の果てにはシャフトがお祭り騒ぎのように左右に跳ねてしまい、まともな符号が打てません。レバー操作が問題なのか、そもそもこのキー自体に問題があるのではないかと残念な気持ちで一杯でした。
GN209FAのせいにしていた私
最初の試し打ちから長いこと上手く打てない日々が続きました。上手く打てることもありました。しかし、それが続きません。モニターで聞きながら練習の日々が続きます。「上手く打てることもありました」では実際の交信では使えません。
こんな使えないキーを売るなんて、買うんじゃなかった。私は思い余ってこのGN209FAを一時メルカリサイトへ出品しました。メルカリにこのような電鍵が出品されるのが少ないせいか、すぐにいいねがいくつも付きました。しかし、しばらくして出品を取り止めました。GN209FAの取扱説明書にあった一文を思い出したからです。
「エレキーの様な符号が出せますが可なりの練習と素質が要ります」
この一文を思い出した瞬間、私はようやく気付きました。GN209FAは、普段使っているマニピュレーターとはまったく性格の異なるキーです。同じ感覚で操作していては、思うように符号が打てるはずもなかったのです。
使いこなすというより、対話すること
私は改めてGN209FAの外観をつぶさに見てみました。レバーの突端からシャフトの支持点間が55mmであること、支持点からシャフトの先端まで140mmあること。(短点側、長点側とも同じ)レバーの突端からシャフトの先端まで優に195mmあります。この長大な195mmの可動部を備えるキーを使って安定したキーイングを維持できるまで、それなりの訓練期間が必要だと認識しました。
購入して半年過ぎたあたりから徐々に打鍵に安定感が増し、和文交信でもミスが減ってきました。
このキーを使う上で最も注意したいのは、やはり長点の送出でしょう。これに尽きると思います。
特にダッシュ側の振り子が持つリズムを壊さないよう、オペレーターはその周期を感じながらレバーを操作する必要があります。無理に自分のリズムで打とうとすると、シャフトは失速したり、逆に暴れたりしてしまいます。GN209FAは、人がキーを支配するのではなく、キーが持つリズムに人が歩調を合わせることで、本来の打鍵性能を発揮するキーなのです。
振り子の振りとは、ウェイトの位置によって決まるそのときの周期のことです。レバーを押すとシャフトは左右に振れますが、その周期を乱さず、安定して維持することが、このキーを扱う上で最も重要になります。気を付けたいのは周期の失速です。ウェイト位置で決まるシャフト本来のリズムを尊重し、そのリズムを乱さないようにレバーを操作しなければなりません。オペレーターはシャフトの動きに意識を集中し、その周期に自らの操作を合わせていく必要があります。
このGN209FAを使って交信するということは、話す相手が二人いるように感じます。一人は交信相手、もう一人はGN209FAです。

実戦で感じたフルオートバグキーの特徴
GN209FAを購入してからすでに3年余り経ちます。和文符号、欧文符号の両刀使いで運用していると、やはり符号の長い和文は今でも神経を使います。その理由は、最初に経験したシャフトの失速による符号の尻切れが、今も強く記憶に残っているからです。シャフトの失速を感じると指に力が入ります。そうすると長点の打鍵スピードが急に上がります。この交信リズムが乱れると交信の雰囲気が壊れてしまいます。
私にはまだまだ訓練が足りないなと思う場面です。
このGN209FAフルオートバグキーを使う上で、もう一つ気に留めていただきたいことがあります。それは、シャフトに「間」をもたせることです。シャフトは次の符号を打つ準備のために、一度ニュートラルの状態へ戻らなければなりません。そこが、シャフトが再び接点へ向かって振れ始めるスタートラインです。この動きを待たずに次の操作へ移ると、例のお祭り騒ぎが起こります。次の符号を打つための一瞬の1拍――これが、フルオートバグキーならではの大切な休憩時間なのです。
DX交信ではパドルを選ぶ理由
GN209FAフルオートバグキーは速射性に優れているとは言えません。そのため、突然DX局が出現したときのように、素早く柔軟な打鍵操作が求められる場面では、私はパドルを使用しています。一方、GN209FAを使うときは、どちらかと言えばCQを出し、相手局に私の打鍵スピードへ合わせていただくような運用が多くなります。
また、このGN209FAフルオートバグキーの操作に慣れてくると、キーイングスピードにも変化を付けられるようになります。私の場合は18~21WPM程度の範囲で使い分けています。長点についても、セミオートバグキーほどではありませんが、気持ち長めに打つことができます。そのため、パドルでは表現しにくい、個性のある符号を送ることもできます。

最後に
最後に、このGN209FAフルオートバグキーを使ってのモールス通信は大変楽しいです。操作の難しさを克服して尚も操作のスキルを上げたくなる奥深さがこのキーにはあります。また、このキーでモールス通信を楽しんでいると、リグそのものへのこだわりが少しずつ薄れていきました。リグはGN209FAが奏でる符号を忠実に電波へ乗せてくれれば、それで十分だと思えるようになったのです。
私はこれからもGN209FAフルオートバグキーと向き合いながら、さらに打鍵技術を磨き、このキーが奏でる符号で、もっと自由にモールス通信を楽しんでいきたいと思っています。
GN209FAの後継機について
このGN209FAフルオートバグキーの製造販売は翌年2024年で終了しています。後継機種として現在GN309FAが、より高速打鍵を意識した造りでラインナップされています。新しいフルオートバグキーGN309FAについては実際に使用した後、このブログで改めて紹介する予定です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。